CDが売れないってハナシ2

前回の記事に続いてCDが売れないことについて考えてみる。


興味深いのは「音楽DVD」の売り上げについてだ。
09年のランキング結果を見てみると、一位は嵐「All the BEST! CLIPS 1999-2009」の59万0642枚*1
この枚数は09年のシングルランキングで見てみると三位にあたるほどだ。 *2
加えてCDシングルと音楽DVDの値段差を考えるとこの売り上げはとても興味深い。
音楽DVD総売上金額は07年から上昇し続けていると言われている。
BDの市場拡大によってメディアの変化はあるにしろ、シングル・アルバムともに不調な今、
一番勢いのある音楽コンテンツと言っても過言では無いかもしれない。


ところで、一位になった嵐「All the BEST! CLIPS 1999-2009」を除くと、
トップ10に入っている作品はみなライヴDVDであるところにも注目したい。
前回書いたように各地のフェスはそれなりに差はあるにしろ、全体を見れば増加傾向にあるし、
ロッキング・オン主催の「JAPAN JAM 2010」など新しいフェスも始まったりしている。
乱暴に言ってしまえば「CD→ライヴ」と音楽の聴き方が変わってきたと言えるだろう。
けれども、一方で「ライヴDVD」の売り上げも増加している。そこに僕は違和感を覚える。
一般的にライヴは、「音楽を聴く」だけではなくてミュージシャンとリスナー、
あるいはリスナーとリスナーの「コミュニケイションの場」として捉えられることが多い。
ライヴだけが増加しているのであれば「音楽を聴く人がコミュニケイションを求めるようになった」と言えるけれども
同時に「ライヴDVD」の売り上げも増えているとそうも簡単に言えなくなってしまう。
求めるのが「音楽を聴く」ならばCDでも良いはずだし、「コミュニケイションの場」ならばライヴに行かなければ意味がない。


それまでCDが持っていた「記録」という面が、
デジタル技術の向上によって薄れてしまったことに、この不思議な現象の原因があるんじゃないか、と僕は思っている。
つまり、90年代のサンプリングの問題や00年代の音圧の問題などからわかるように、
ある一つの王道が作られるとそれに沿った方法が簡単に出来てしまうために
似たような音(メロディや歌詞ではなくて音色の話)の曲が増えすぎてしまう。
また一方で「60年代っぽい音」というのも簡単に"再現"できてしまって、
あくまで僕の個人的な感覚だが、本当の意味での「生っぽさ」という感じは今のCDからはあまり感じられない。
ようするに、その「生っぽさ」というのをCDに代わって引き受けているのが「ライヴDVD」なのではないか、と。



けれども、この「ライヴDVD」がCDに代わる音楽メディアになるかと言うと僕はならないと思っている。
ライヴDVDはあくまでのライヴの記録に過ぎないからだ。
そうなるとやっぱりCDの売れ行きが落ち続けているというのは問題で
結局「ライヴ行くのもいいけどさ、CDも買おうぜ!」というところに落ち着いてしまう。


だからさ、ライヴ行くのもいいけどさ、CDも買おうぜ!*3

*1:http://blog.oricon.co.jp/ukki-monkey/archive/4584/0

*2:3位 51万3186枚 嵐「マイガール」 11/11

*3:僕は最近、全然新譜を買えてないですが。