ムクワジュ。

僕が住む町は夜になると人気が無くなる。終電を逃すほど魅力的な場所が無いから。
東京だって眠らない街と眠る町がある。
人気のない喫煙所で煙草を吸いながらぼうっとする。
最近では色々とあるからテレビ局が自主的にそうすることが多いらしいけれど
例えば渋谷の雑踏をテレビで映すとき、通行人の顔にモザイクをかけなくても良いらしい。
雑踏の人々はその街の「景観」として扱われる。と何かで見た記憶がある。
肺に煙を入れながらぼうっとする。その瞬間はその町の景観になる。
久石譲のムクワジュを聴く。細かく動き回る音を一つ一つ捕らえようとして少しだけ酔う。
ミニマル。
最後の音が鳴ったのと煙草が短くなったのと思い出したように寒気がしたのが重なる。
町の景観から独りの人間になる。少しだけ寂しくなる。
NUMBERGIRLが歌った「彼女(少女)」やフィッシュマンズが歌った「君」がいてくれたら。と思った。
いたところで寂しいと感じることは無くならないと思うし、それは長い目で見れば一瞬の気休めでしかないんだけれど
今この瞬間でも慰められるんだったらまあそれはそれでいいかっていう自分本位な考え。なんだそれ、サイテー。ハハハ。
音楽は「レモア」へと移っていた。