僕とトモさん。

一昨年の夏の話。
当時は学校は糞だと本気で思っていたので、よく学校をサボって
一人で秋葉原やお茶ノ水に「社会科見学」に行っていた。
僕が色々なバンドのライヴに足を運ぶようになったのも確かその頃だったと思う。
独りでライヴハウスに行って知らない人達と音楽を聴いていると
少しだけイケナイコトをしている気分になれたし、大人ぶることで
糞みたいな高校生と自分は違うという感覚も味わえた。今思うとものすごくくだらないと思うんだけれど。


僕はその時にとあるバンドが好きになって、よくライヴに遊びに行くようになった。
何度か足を運ぶうちに、バンドの人に顔を覚えてもらい
中打ち(バンドと客がライヴハウス内でやる打ち上げ)にも参加させてもらうようになった。
「16歳の高校生」というのが珍しかったらしく積極的に話しかけてもらい色々な人話すようになった。
大学生をはじめ会社員、フリーター、フリーライター、グラフィックデザイナーと
さまざまな職業の人と話をすることで、自分と普通の高校生は違うんだ、というありがちな感情も満たせたし
何よりその人達の会話はとても新鮮で本当の意味での「社会科見学」をしているようだった。


その中で一人、「トモさん」という大学生の女の人がいて
そこが都心のライヴハウスにも関わらず家が結構近くて(僕は東京の郊外に住んでいる)
音楽の趣味が似ているというのもあってすぐに打ち解けることができた。
フィッシュマンズゆらゆら帝国七尾旅人なんかを聴くようになったのも彼女に勧められたからだった。
見た目が「いかにも!」な文化系女の子(黒髪のボブ、メガネ、自己主張をしない服装!)にもかかわらず
ものすごく積極的に話しかけてくれて、まあ、ありがちなんだけれど
僕は彼女に愛だの恋だのをしてしまう訳です。


けれど周りの会話から察するに彼女には恋人がいるみたいだったし
何より僕に対して振る舞いが弟的なものだった(実際に僕の一個上の弟がいるらしい)ことから
どうすることもできないモヤモヤ感を抱きつつ、ライヴハウスで会っては少し話すというのを続けていた。
あの頃、僕が髭を生やし始めたのもそのことと無関係では無かった。と思う。


結局、僕は2回だけデートというかライヴハウスじゃないところでウダウダとしただけで
何もすることができないまま、そのバンドが活動休止するのと、僕のケータイがぶっ壊れたのもあって
彼女と連絡が取れないまま一年くらい経ってしまった。
ケータイを変えたとき僕はアドレス帳のデータを全て失ってしまったのだけれど
僕のアドレス自体は変わっていない。
それでも彼女からのメールが来ないところを見ると、やっぱり駄目だったのかも知れない。



4月の上旬にそのバンドが活動を再開するらしい。
昨日、ライヴのお誘いメールをもらったのだけれど、行こうか今少し悩んでいる。
まあ実際この一年くらいで、そういうありがちな感情も丸くなって
今は別に特別なものも感じないのだけれど、なんとなく腰が重くなる。
でもなあ、対バンも結構豪華なんだよなあ。うーん。

















という嘘を今年の4月1日用に考えているのだけれど、どうだろうか?